ガバナンスとは何か?

最近,「ガバナンス」という言葉が世間をにぎわせている.’govenance’の辞書的意味は「統治」「支配」「統御」「管理」などであり※,トップ・ダウン的なイメージである.それが,現代的意味で使われ始めたきっかけの一つは,雑誌Governance: An international Journal of Policy, Administration and Institutionsの発行であろう.1988年のことだ.1970年代から80年代にかけ,政府(国家だけでなく国連など国際的統治機関も含む)の統治能力が問われたことが背景にある.それから約20年,現代の日本では,「ガバナンス」という用語が散乱している.「コーポレート・ガバナンス」,「ITガバナンス」,「環境ガバナンス」,「グローバル・ガバナンス」等々である.これまで「政策」といっていた言葉を「ガバナンス」と言い換えることで「協治」を意味する,と言えばかっこいいが,言葉の魔術に騙されないようにしなければならない.
市民はどんな参加が可能なのか?政策決定に直接関与すべきなのか?はたしてその参加の様式は適当なのか?参加することによって生じる責任をどうするのか?参加した市民は問題が起こった時の責任までを背負うのか?
「ガバナンス」のシステム作りは,まだまだこれからといった現状だ.もちろん,「科学技術ガバナンス」においてもしかりだ.
新しい公共」のスローガンはすばらしいが,どんな方向が目指されるのか,国の動きにも注目していこう.

↓鳩山政権の第1回「新しい公共」円卓会議は,こちらで見ることができる.
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg3204.html
なるほど,なるほど!

※小稲義男編『新英和大辞典』研究社2000年p.909. 同辞典によると,‘governance’の動詞形‘govern’は,ラテン語の「船の舵をとる」という意味のラテン語‘guvernare’に由来する.