科学リテラシー

科学(的)リテラシーの議論が再燃している(例えば、『理科教室』2010年1月号、『科学教育研究』Vol.32(4)2008年)。日本においてこの研究が活発化したのは、AAAS(1989)のScience for All Americans 以降、1990年代以降であるが、それ以前にも前史があった(例えば、上記『理科教室』2010年1月号において鶴岡義彦氏が論じている)。私が知る限りでは、アメリカでScientific Literacyという用語が最初に登場したのは、ハーバード大で長く総長をしていたJames B. Conantが使った例であり、1952年のことである(Generel Education in Science という本のForwardで用いている。自分は見落としていたのだが、斉藤萌木氏の2007年の科学教育学会での口頭発表により知った。)。同じくハーバードの科学史家ホールトンは、この頃のアメリカにとって、大衆の科学的リテラシーがいかに必要なものであったか(筆者注;広島・長崎への原爆投下による大衆の疑念にもかかわらず、科学のプラスの面にのみ着目させ、冷戦体制への足固めをしたと考えられる)を論じている。科学的リテラシーと言えば聞こえがいいが、政治の道具に使われていないか、どんな内容の科学的リテラシーなのか、をよく吟味する必要があろう。